ある理学療法士のブログ

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前十字靭帯術後の関節可動域訓練の進め方

はじめに 

 前十字靭帯の術後に限らず、運動器術後のリハビリテーションにおいて可動域の獲得が重要なことは言うまでもありません。しかし、靭帯損傷に対する再建術後の可動域訓練の進め方は非常に繊細で経験測によるところが大きい気がします。

 そこで、今回は膝前十字靭帯損傷に対する手術件数が日本一である関東労災病院の今屋 健先生の著書からそのコツを学んでみたいと思います。

前十字靭帯損傷術後の関節可動域訓練は難しい

別の記事

膝前十字靭帯(ACL)損傷のリハビリテーションの進め方 - docdamitaro’s blog

でも書きましたが前十字靭帯再建術後の関節可動域訓練の進め方は非常に難しいです。骨折後の関節可動域はとにかく固さをとって可動域の改善を図ることに全力を尽くせばよいのですが、前十字靭帯再建術後の場合はあまり早く進めすぎるとゆるみの原因となってしまう場合があるため(最近は早く可動域を獲得しても大丈夫といわれているみたいですが。。。)術後期間や患者さんの個体差に気をつけてリハビリを進めていく必要があります。

 かくいう私もまだ経験が浅いときにはゆるみが出ないように用心しすぎて固さが残ってしまったりといった苦い経験があります。とにかく、可動域訓練を行っていてもこれで良いのか?という手応えというか確信みたいなものが乏しくていつも恐々行っていたのを今でも覚えています。

 たくさんの症例を経験した今ならばある程度これまでの症例と比較することで『手応えやこれで良いという確信』をもって可動域訓練を進めていくことができますが、やはり経験が浅い段階では難しいと思います。

可動性と安定性は反比例

 前十字靭帯再建術後の可動域訓練を進めていくうえで非常に大切な考え方があります。

 それは、『関節の可動性と安定性は反比例の関係にある』

ということです。これは前出の今屋先生が著書の中で述べられている考え方でが、可動性の高い膝は運動性は高いが安定性が低く、逆に可動性の低い膝は運動性が低くなる一方で安定性は高くなるということです。

 ということは、目の前の患者さんにとって運動性がより求められるのか、それとも安定性を重要視すべきなのかを判断しつつちょうど良い塩梅で可動域訓練を進めていくことが可能であり、同時に理学療法士にはそれをできる能力が求められるということだと思っています。

ジョイントプレイと過伸展

 この可動性と安定性のバランスを考えながら可動域訓練を進めていくというのが非常に難しくどうしても経験が必要になると思います。しかし、今屋先生はこれを『健側膝のジョイントプレイと過伸展』の関係から術側膝が術後、どのくらい固くなりやすいかを予測しその進め方を言語化しています。

 これってすごいことだと思うんです。

 このブログを読んでいただいている方の中で前十字靭帯再建術後の患者さんを日頃から診ている方でも、患者さんを目の前にして触ったら分かるけどなぜそう思うかはっきり言えない方、いませんか?

 恥ずかしながら私はそういう感じです。前十字靭帯再建術後に限らず、他の疾患でもそんな感じなんです。。。(*ノωノ)

 今屋先生は膝関節のジョイントプレイを『各々の症例が有する生理的な膝関節の遊びの大きさのこと』と定義し、このジョイントプレイと膝の過伸展の関係性から予後予測を行っています。

 詳しくは是非今屋先生の書籍を読んでみてほしいのですが、『過伸展があり、ジョイントプレイが小さい膝は術後に伸展制限を起こす可能性が高く』、一方『過伸展の有無にかかわらずジョイントプレイ大きい膝の場合、屈曲、伸展ともに可動域の獲得は比較的容易である』と述べられています。

 つまり、『過伸展+ジョイントプレイ小』の場合は少し強めに可動域訓練を進めていき、『過伸展の有無にかかわらずジョイントプレイが大』の場合には積極的に訓練は進めていかずに角度の確認する程度に収めておくということです。

 実際に、私の患者さんの中でも可動域の獲得にすごく苦労する症例もいれば、本当に何にもしなくても良くなっていく症例もいます。『なるほど、それってこういうことなんだなー』と本書を読んだ後に改めて思いました。

まとめ

 今回は前十字靭帯再建術後の関節可動域訓練を進めていくうえで有益なガイドとして用いることができる考え方を紹介させていただきました。

 私はよく前十字靭帯再建術後のリハビリについて参考書を探すのですが、なかなか良い本が見つからず、そもそも前十字靭帯再建術後のリハビリについてしっかり書かれている書籍自体が少ないんですよね。

 そんな中、今回参考にさせていただいた『改定第3版 スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション』は前十字靭帯損傷後の手術法、可動域、筋力についてかなりボリューミーに書かれてあり非常に勉強になりました。

 正直、私は今回まとめた『ジョイントプレイと過伸展の関係、そこから術後の可動域制限を予測する』という部分だけでも書籍の値段分の価値があると思いました。これから前十字靭帯再建術後の患者さんを診たいもしくは診なければならないという方には必読の一冊だと思います。

 最後までブログを読んでいただいてありがとうございました。今回の記事が少しでもどなたかの助けになったら幸いです。

参考文献

 改定第3版 スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション   P270-281               著者:園部 俊晴・今屋 健・勝木秀治   運動と医学の出版社