ある理学療法士のブログ

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「神経モビライゼーション」の臨床活用

 前回の記事では「末梢神経のなぜ?がわかる機能解剖学」という研修を受けての学びについて書きました。今回はその末梢神経に対して私が実際に臨床で行っているアプローチについて書きたいと思います。

 

   

 

日常でよく経験するもの

 私が日常の臨床で注目している神経は以下の4つです(私は1日中ほぼ膝の患者さんしか診ていませんので)

  1. 伏在神経
  2. 坐骨神経
  3. 脛骨神経
  4. 総腓骨神経

「伏在神経」について

伏在神経とは、大腿神経から分岐した知覚枝で、縫工筋の深部を下行して内転筋管(内転筋結節から約7cm上方の辺り)を通過し、膝内側領域と下腿内側領域の感覚を支配する神経です。そのため、伏在神経が絞扼されるとその支配領域に感覚障害や痛みが生じることがあるとされています。

縫工筋の絞扼されやすい部位は

  • 内転筋管(Hunter管)

  • 縫工筋の筋腹

*内転筋管(Hunter管)は、内側広筋の後面でかつ大内転筋の前面に位置している(内側広筋と大内転筋が交わる部位にある広筋内転筋板のある位置)。

プロメテウス解剖学コアアトラスより

臨床ポイント

 伏在神経に関してはその支配領域である膝内側から下腿内側近位に痛みや感覚障害が起こっている場合に着目します。また、伏在神経の膝蓋下枝が膝蓋下脂肪体へ入っているため伏在神経へアプローチすることによって膝蓋下脂肪体の痛みが緩和する症例がいます。膝蓋下脂肪体は変形性膝関節症患者さんの痛みの原因となることが多い箇所なので理学療法アプローチとしてはもちろん、ホームエクササイズとしても指導しています。

 具体的アプローチ方法としては上記の内転筋管周囲と縫工筋を徒手でマッサージしています。

坐骨神経・脛骨神経・総腓骨神経

 この3つは同じ流れの神経です。患者さんに良く説明するのですが大きな川(坐骨神経)が膝裏で支流(脛骨神経、総腓骨神経)に分かれていくイメージです。

坐骨神経

 坐骨神経とは第4腰椎から第3仙骨の脊髄神経の腹側枝から形成される仙骨神経叢の上部の延長にであり、体内で最も大きな神経です。梨状筋の深部で下方に走り、坐骨の後方で大腿四頭筋の神経を横切ります。この梨状筋の深部で絞扼されることが多いといわれています(梨状筋症候群)。また、坐骨神経は股関節枝を出し、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、大内転筋の坐骨頭への筋枝を持ちます。

プロメテウス解剖学コアアトラスより

脛骨神経

 脛骨神経は膝窩部の少し上で坐骨神経から分かれて膝窩から下腿深部を通って外側足底神経と内側足底神経に分かれます。足の足底筋(下腿三頭筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋)を支配します。また、下腿後面の皮膚感覚を担う腓腹神経を出します。

プロメテウス解剖学コアアトラスより

総腓骨神経

 総腓骨神経は膝窩部の少し上で坐骨神経から分かれて外側腓腹神経を出した後に、膝の後面から腓骨頭の外側を回り、線腓骨神経と深腓骨神経に分かれます。これらは足の外反に働く筋肉(長・短腓骨筋)や背屈に働く筋肉(前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋)を支配するため、神経障害により下垂足をきたします。

プロメテウス解剖学コアアトラスより

 

プロメテウス解剖学コアアトラスより

臨床のポイント

 まず、坐骨神経については臀部から大腿後面にかけて痛みがある場合に着目します。また、脛骨神経に関しては膝窩部に痛みを訴えている場合、総腓骨神経に関しては膝の後外側から外側にかけて痛みを訴える場合にその関与を疑います。

 特に、膝窩部の痛みに関しては私自身これまで治療に難渋していました。しかし、神経に着目してアプローチするようになってから膝窩部の痛みがかなり多くの症例で改善するようになりました(もちろん、すべてが神経由来というわけではないのでしっかり鑑別していくことは必要ですが)。また、ちょっと不思議なのですが、脛骨神経の滑走アプローチを行うと膝の屈曲角度も改善します。

 具体的アプローチ方法としては前回紹介した工藤先生の研修でも紹介されていた神経モビライゼーションを行っています。イメージとしては他動的にSLRの体勢を作って患者さんに足関節を底背屈してもらうような感じです。バトラー神経モビライゼーションという本は少し難しくて読みにくい本ですが一読の価値はあると思います。

 

まとめ

 今回は前回記事にした『「末梢神経のなぜ?がわかる機能解剖学」という研修を受けて』という内容から、最近の臨床場面で私がどのようにその考えを用いているかについて書いてみました。もし前回の記事をまだ読んでいない方がいらっしゃったら読んでみてください。

 

docdamitaro.hatenablog.com

 

 

【参考文献】

プロメテウス解剖学コアアトラス第3版  医学書